介護の現場で働いていると、さまざまなスタッフと関わる機会があります。
しかし、チームワークが欠かせない仕事だからこそ、人間関係に悩みがある方も少なくありません。
「嫌な思いをしているけど、パワハラかどうか判断できない」
「パワハラを受けているけど誰に相談すればいいのかわからない」
このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
パワハラは、職場内での優越的な立場を利用して業務の適正範囲を超えた叱責などを行い、労働者の就業環境を害する行為が当てはまります。
本記事では、介護現場のパワハラの実態と対処法を中心に解説します。
パワハラの定義とは?
厚生労働省は、以下の3つの要素を全て満たした行為をパワハラ(パワーハラスメント)としています。
- 職場での優越的な立場を利用している
- 業務の適正な範囲を超えている
- 労働者の就業環境を害している
具体的には職場の上司が部下を叱責し、土下座を強要したり暴言を繰り返すなどの行為が該当すると考えられるでしょう。
パワハラの種類は6つ
パワハラは大きく分けて、次の6種類があります。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
殴る・蹴るなどの身体的な攻撃や、人格を否定するような言動をする精神的な攻撃はパワハラに当てはまります。
加えて、業務と関係ない雑務を強制的に行わせる過大な要求や、嫌がらせのために仕事を与えない過小な要求もパワハラとなります。
特定の労働者が孤立するように仕向ける人間関係からの切り離しや、プライベートな内容に過度に立ち入ることも個の侵害に当てはまるため、見落とさないようにしましょう。
なお、パワハラの定義とされている3つの要素を全て満たしたものがパワハラに該当します。
それぞれの状況によって判断は異なるため注意しましょう。
介護現場におけるパワハラの実態
公益財団法人「介護労働安定センター」は介護サービスに従事している全国の労働者に対し、パワハラに関する調査を実施しました。
職場で受けたことがあるハラスメントについてたずねたところ、以下のような結果となりました。
- 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言などの精神的な攻撃を受けた→8.0%
- 隔離・仲間外し・無視などの人間関係からの切り離しを受けた→4.5%
- 私的なことに過度に立ち入ることなどの個の侵害を受けた→3.7%
- 業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害などの過大な要求を受けた→3.1%
- 暴行・傷害などの身体的な攻撃を受けた→1.6%
- 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないなどの過小な要求を受けた→1.4%
以上の結果から、介護現場ではパワハラのなかでも精神的な攻撃がもっとも多いのが現状だと言えるでしょう。
パワハラの相談先は?
パワハラを受けた場合、次のような相談窓口の利用も検討しましょう。
- 社内の相談窓口
- 総合労働相談コーナー
- ハラスメント悩み相談室
それぞれ詳しく解説します。
社内の相談窓口
2020年6月1日より、大企業ではハラスメント対策のための相談窓口の設置が義務化されています。
また、中小企業であっても2022年4月1日から相談窓口の設置が義務化されているため、会社に所属している場合はハラスメントについて相談できる場は設けられているのです。
社員からパワハラの相談を受けた場合、会社は解決に向けて対応する義務が存在します。
そのため、パワハラで悩んでいる場合は社内の相談窓口の利用も検討しましょう。
総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、都道府県の労働局にある相談窓口であり、解雇・いじめ・嫌がらせ・パワハラなどの幅広い労働問題の相談が可能です。
総合労働相談コーナーでは、相談に対する「助言・指導」や「あっせん」が受けられ、話し合いによる解決に向けてサポートが受けられます。
社内の相談窓口が利用しづらい方は総合労働相談コーナーの利用も選択肢に入れましょう。
ハラスメント悩み相談室
ハラスメント悩み相談室は、厚生労働省から委託されている相談窓口です。
パワハラやセクハラなどの幅広いハラスメントを相談でき、必要に応じて適している相談先を紹介してもらえることもあります。
電話やメール、SNSでの相談も受け付けているため相談しやすいでしょう。
なお、相談内容がハラスメントに該当するかどうかの判断はできません。
その点は理解したうえで相談しましょう。
介護の職場でパワハラを受けた場合の対処法
介護の職場でパワハラを受けた場合はどのように対処すればよいのでしょうか?
3つの対処法をご紹介します。
できるかぎり証拠を残す
パワハラと思われる行為を受けた場合は、次のような証拠を残しましょう。
- パワハラに該当する音声を録音した音声データ
- メールやラインなどのやり取りの履歴
- 動画
- 被害者が病院に受診した場合は診断書
- 被害者の日記やメモ
上記のような証拠を残すことで、窓口で相談する場合も話がスムーズに進みやすくなるケースもあります。
パワハラに該当するかもしれないと感じたら、なるべく証拠を残すように心掛けましょう。
周囲に相談する
介護の現場では複数のスタッフで働く職場もあります。そのため、信頼できるスタッフや上司に相談する方法もあるでしょう。
周囲の協力が得られれば、パワハラを回避できたり止められる可能性もあります。
また、パワハラの被害を受けているスタッフがほかにもいた場合は社内の相談窓口への相談もしやすくなるでしょう。
異動・転職も検討する
パワハラを受けた場合、自分を守るために異動や転職も選択肢に入れてみましょう。
介護施設を運営している法人や会社は複数の施設を運営しているケースもあります。
そのため、グループ内で異動してパワハラを回避する方法もあるでしょう。
しかし、異動が認められるかどうかは会社次第であるため、希望通りに進まない可能性もあるため注意しましょう。
また、介護職として働ける職場の選択肢は幅広いです。
自身のキャリアを見直すきっかけとして、転職を検討する方法もあるでしょう。
転職活動にあたって自ら退職理由を明かす必要はありませんが、説明せざるを得ない場面もあります。
そんな時は、パワハラを解決する努力を怠らなかったことや、それでも解決できずに退職に至った経緯を伝えましょう。
まとめ|介護職として働き続けるためにもパワハラには適切に対応しよう
介護職はストレスも多い仕事ですが、だからといってパワハラは許されるものではありません。
パワハラについて理解を深め自分の心身の健康を守るためにも、相談窓口に関する情報や対処法を役立ててくださいね。