VPNを利用したインターネット通信は、匿名性が高く安全なので、年々使用する個人や企業が増えています。
しかし、VPNの利用が法律や規則により禁止・制限されている国が存在しており、海外での利用は注意する必要があります。
本記事では、VPNの利用が違法か合法かの結論のほか、各国においてVPNの利用がどのように制限・禁止されているのかについて、背景情報とともに詳しく解説します。
VPNの利用は違法?合法?
結論からいえば、VPN(仮想プライベートネットワーク)の利用が違法か合法かは、国や地域によって異なります。
VPN自体は、インターネットの通信内容を暗号化し、ユーザーのIPアドレスなどのプライバシー保護やセキュリティを機能を高めるツールです。
しかし、一部の国や地域においては、さまざまな理由から法律や規則によって利用が制限・禁止されています。
なお、VPNの利用自体が合法の国であっても、使用目的が違法ダウンロードなどの犯罪行為である場合は、当然ながら刑罰の対象になる可能性があります。
日本・欧米などではVPN利用は合法
日本や多くの欧米諸国では、
VPNの利用は合法です。
これらの国や地域では、VPNを個人が日常的にプライバシー保護やセキュリティ向上に使ったり、ビジネス目的やリモートアクセス、公共Wi-Fiネットワークのセキュリティ向上を図ったりするなど、さまざまな目的で導入されています。
このように、VPNの利用を禁止・制限するどころか、積極的に生活やビジネスに取り入れ、活用されていることが分かります。
一部の国では違法・制限あり
一方で、一部の国ではVPNの利用が違法または制限されていることがあります。
VPNが制限される理由はさまざまですが、主に「情報統制」「言論弾圧」「一部コンテンツへのアクセス制限」などが挙げられます。
一般的にVPNは、インターネットを使用する際のプライバシーやセキュリティを保護する目的で用いられますが、一方で政府や企業による検閲や監視を回避する手段にも使用できます。
したがって、検閲を回避されることが望ましくないと考えている国や機関はVPNの使用を法律で禁止・制限しているのです。
違法としている国または厳しく制限している国
この項目では、VPNの利用が違法・または厳しく制限している国の紹介と、背景情報について解説します。
中国
中国政府は、インターネットの検閲を厳しく行っており、VPNも認可された事業者しか利用できません。
具体的には、インターネット上の反政府活動や言論弾圧を目的とした、「金盾」と呼ばれるインターネット検閲システムを構築し、政府が不適切と判断したコンテンツや発言をブロック、削除します。
以上のことから、中国で自由にインターネットを利用するためには「金盾」を突破できるVPNの利用が半ば必須となっています。詳しくは中国で使えるおすすめVPN13選!違法性や規制についても詳しく解説 更新を参考にしてください。
ベラルーシ
ベラルーシ政府は2015年以降、政府に対する抗議行動や弾圧を抑制する手段としてインターネットの検閲を強化しました。
その一環として、検閲を突破できるVPNの利用も違法とされています。
トルクメニスタン
トルクメニスタンは、インターネット検閲が厳しい国として有名で、ほとんどの国民は厳しく検閲された「Turkmenet」しか利用できません。
当然、VPNの利用も違法とされています。
北朝鮮
北朝鮮は観光客など、他国の人間がVPNを利用するのは問題ありませんが、現地民が利用するのは違法となり禁止されています。
インターネットの検閲に関しては、隣国である中国より厳しく、国民のほとんどはVPNどころかインターネットを利用することもできません。
北朝鮮が厳しいインターネットの検閲を行っているのは、中国と同様に情報統制が目的であると考えられています。
なお、北朝鮮でVPNの使用を試みると、最悪の場合懲役刑になる可能性があるため、十分な注意が必要です。
イラク
イラクでは2014年からVPNの利用が法律によって禁止されています。
法律で禁止された背景として、ISISに代表されるテロ組織が各種SNSを介して情報発信を行い、公衆に影響を与えることを未然に防ぐためとされています。
イラン
イランではVPNは違法とはならず、政府に認可された事業者のみ利用可能です。
イランは中国同様に、YouTube、Twitter、Instagramなど主要SNSへのアクセスが遮断され利用できません。
また、イラン政府はサイバー警察を発足させ、ネット監視を強化しており、反政府デモ活動のほか、ポルノサイトの運営なども厳しく取り締まっています。
オマーン
オマーンは、情報の暗号化を行うことを明確に法律で禁止しています。
当然ながら、一般ユーザーが暗号化技術を用いているVPNの利用は違法となりますが、オマーンの電気通信規制庁(TRA)が認めた機関や組織であれば、例外的に利用が認められています。
制限付きで合法としている国
この項目では、VPNの利用を制限つきで合法としている国の紹介と、背景情報について解説します。
エジプト
エジプトはVPNの利用自体は合法とされていますが、不道徳とされるアプリやサービスはブロックされています。
エジプト政府は不道徳としているアプリやサービスは、SkypeやFaceTimeに代表されるビデオ通話アプリが含まれています。
ブロックされているコンテンツに対してVPNを使ってアクセスしようとすると法律違反となり、何らかの罰金もしくは刑罰を科される可能性があるため、注意が必要です。
トルコ
トルコは世界的にインターネットの検閲やSNS規制が強い国として知られています。
トルコ政府はFacebook、Twitter、YouTubeはもちろん、Wikipediaに至るまで、実に多数のサービスやコンテンツをブロックしています。
トルコにおいてVPNの利用自体は違法になりませんが、すでに多くのVPNがブロックされており、限られた事業者しか使えないのが現状です。
アラブ首長国連邦(UAE)
アラブ首長国連邦において、VPNは一般的な目的で使用する限り合法とされています。
しかし、犯罪目的で使用したり、政府が禁止しているコンテンツにアクセスするためにVPNを使うと、何らかの処罰の対象になる場合があります。
個別にVPNの使用による刑罰を用意していることから、アラブ首長国連邦はVPNの使用を歓迎していないことが伺えます。
合法だが事実上制限されている国
この項目では、VPNの利用は合法だが、事実上制限されている国の紹介と、背景情報について解説します。
シリア
シリアは2011年ごろより長期にわたる内戦と政治的不安定さの影響を受けており、政府による情報統制が厳しく行われています。
シリア国内におけるVPNの利用自体は法律に触れていないものの、情報統制を突破して自由にインターネットを利用しようと試みる国民が多く、政府がVPNの使用を制限する取り組みが行われています。
ウガンダ
ウガンダは2018年7月にSNS税が施行され、FacebookやTwitter、Instagram、SkypeなどのSNSの利用やモバイル決済を利用する場合、税金の支払いが発生するようになりました。
当然ながらSNS税に対して不満を覚える人は多く、VPNを使って脱税を試みる国民が急増してしまう事態になりました。
この流れを受けて、ウガンダ政府は多くのVPNサービスをブロックしているため、違法ではないものの、事実上制限されています。
VPNの利用についてよくある質問
VPNの利用についてよくある質問を掲載します。
VPNに危険性はある?
VPN自体は一般的にセキュリティとプライバシーを強化するための有用なツールですが、一部の事業者や状況、利用方法において注意が必要な点も存在します。
以下に該当するVPNサービスは危険性があるためおすすめしません。
- 無料のVPNサービス
- ノーログポリシーを掲げていない
- セキュリティ機能の詳細が不明
多くの有料VPNサービスは、セキュリティ機能も高く、危険性は皆無といっていいでしょう。
しかし、セキュリティ機能に劣る無料のVPNサービスや、ノーログポリシーを掲げていない事業者は、ユーザーの個人情報が漏えいしたり、不正アクセスの対象になったりと、危険性は高いです。
また、有料VPNサービスであっても、採用しているセキュリティ機能の詳細が不明な場合は、利用を避けるのが賢明です。
VPNのメリットとデメリットは?
VPNを利用することで得られる一番大きなメリットは、匿名性の高い安全なインターネット通信を行えることです。
一方で、VPNのデメリットは、中継サーバーを経由し通信を暗号化する仕組み上、どうしても通常の通信より速度が低下してしまう点です。
また、セキュリティ機能に優れたVPNサービスの多くは有料となるため、一定のコストがかかる点もデメリットといえるでしょう。
国外の動画サービスやWebサイトの閲覧でVPNを使うのは違法?
国外の動画サービスやWebサイトの閲覧でVPNを使うのは違法ではありません。
ただし、違法アップロードされた動画の視聴をする際に足がつかない様にVPNを利用する行為は、著作権侵害にあたるため、罪に問われる可能性が十分考えられます。
また、動画サービスによっては、VPNによる接続を規約で禁止している場合があります。
VPNはIPアドレスを隠してくれる?
VPNは専用のVPN中継サーバーを経由することで本来のIPアドレスを隠し、匿名性の高いインターネット通信を可能にします。
IPアドレスを隠すことで、以下のメリットがあります。
- 匿名でインターネット利用できる
- 地域制限(ジオブロック)を回避できる
- 不正アクセス対策になる
ただし、アクセスされる側にVPNを介したIPアドレスだと知られている場合は、地域制限を回避できなかったり、アクセス自体を拒否されたりする可能性があるため、万能というわけではありません。
無料と有料の違いは?
無料VPNと有料VPNの違いは以下のとおりです。
項目 | 無料 | 有料 |
---|---|---|
通信速度 | 遅い | 速い |
サーバー数 | 少ない | 多い |
安全性 | 低い | 高い |
当然ながら有料VPNの方が、「通信速度」「サーバー数」「安全性」すべてにおいて勝っています。
サーバーに関しては、単純に利用できるサーバーが少ないだけではなく、選択できる国がかなり限られているため、使い勝手は悪いです。
また、安全性に関してはセキュリティ性能が低いだけではなく、最悪の場合、マルウェアやウィルスに感染するリスクもあるため、無料VPNを使用するのは避けた方が賢明です。
トレントにVPNを使用することは違法?
トレント(Torrent)によるダウンロードを行う際に、VPNを使用することは何ら違法性はありません。
しかし、著作権に保護されたデータやコンテンツを著作権者の許可なくダウンロードすることは違法になります。
VPNを利用することで、IPアドレスを特定されるリスクを下げることは可能ですが、著作権侵害に対して完全な対策となるわけではありません。
警察はVPN利用時の通信データを追跡できる?
警察は、VPN利用時の通信データを追跡できる可能性があります。
何らかの事件によって警察が動く場合、まずISP(インターネットサービスプロバイダ)に通信ログを要求し、続いて接続先のVPNサービスに通信ログの提供を要求します。
ただし、複雑に暗号化されたデータは警察であっても解析することは容易ではなく、多くのVPNサービスはノーログポリシーを掲げているため、ログそのものが残されていないことが多いです。
しがたって、しっかりとしたセキュリティ機能を有しているVPNサービスを利用しているのであれば、警察といえど追跡できる範囲に限度があります。
VPNの違法性についてまとめ
本記事では、VPNの違法性について解説しました。
- 日本や多くの欧米諸国においてVPNの利用は合法である
- VPNの利用を法律や規則で禁止・制限している国も多い
- VPNが禁止されている国で使用を試みると懲役刑を処される場合もある
- VPNを使って地域制限を解除することは違法ではない
VPNを利用することで、IPアドレスを隠し、匿名性の高い安全な通信が行えます。
しかし、ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、イラクといったVPNを法律で禁止している国もあり、可能であれば利用を避けるべきでしょう。
また、VPNが合法である日本や多くの欧米諸国で使用する場合であっても無料のVPNを利用するのは、セキュリティの観点からおすすめできません。
不正アクセスやウィルスの感染を防いだり、IPアドレスを追跡されたりすることを避けるために、どのような場合であっても、セキュリティの強い有料のVPNサービスを利用しましょう。